石灰事業
石灰に秘められた可能性を追求し、人と地球環境にやさしい製品を社会に還元しています。
    人々の暮らしには欠かせない、石灰石の恵み。石灰石は、暮らしに欠かせない資源です。鉄鋼やセメント、ガラスといった建築資材をはじめ、紙やゴム、プラスチック、薬品、食品など、様々な必需品に幅広く利用されています。
    石灰事業に求められるものは、良質な石灰石の確保、確かな採掘技術、優れた焼成・加工技術です。なかでも石灰石は、資源の乏しい日本のなかにあって唯一輸入に頼らない天然鉱物です。しかし、採掘すればいずれなくなる宿命にあり、事業の行く末には退路のない厳しい現実があります。
   矢橋グループは、50年以上にわたって大垣市北部に位置する金生山を中心に、石灰石の採掘を行ってきました。しかしいずれ来る終掘に備え、跡地再生計画の立案と共に、新資源の確保について国内外にネットワークを張り巡らし、技術移転のみならず、その地の経済発展を願いながら事業活動を続けていきます。
環境に配慮した石灰石の採掘

良質な石灰石が賦存する金生山は、日本国内では類を見ない都市立地型の鉱山であり、鉱山周囲には民家が密集しています。このため振動、騒音、粉じん等の鉱害には十分な配慮が不可欠です。 発破・積込・運搬の採鉱課、破砕・分級・水洗の選鉱課が、部門ごとにきめ細かな鉱害対策を講じると共に、地域住民の皆様とのコミュニケーションを積極的に図っています。

矢橋工業の貯鉱ヤード

油圧ショベル・重ダンプトラック
測量技術に裏打ちされた切羽管理
当グループで開発したレーザー測距機を用いて、切羽管理、石灰石の品質管理を行っています。簡易的かつ正確に測量を行うことにより、切羽の日常管理を容易に行うことができ、計画的な出鉱計画の立案が可能となりました。同時に石灰石の品質別の位置情報を的確に把握することにより、石灰石の品質データベースの構築が容易となりました。

金生山の切羽

鉱山景観図(ベトナム)
品質管理
金生山は、良質な石灰石からなっていますが、形成された時代と環境の違う地層が重なっているため、微量元素が偏在しています。日々の品質管理を厳格に行うことによって、安定した品質の石灰石製品を生産しています。採掘部門と品質管理部門とが常に緊密な連携を図りながら日々の品質管理を進めています。またあらゆる品質の石灰石を活用できるよう、数々の工夫を凝らしています。

蛍光X線分析装置

高周波プラズマ発光分析装置
資源の有効活用
金生山において採掘したものは、有効活用を行っています。石灰石鉱床の上部を覆う表土、鉱床内に貫入している異種岩石等は土木・建築材料に姿を変えています。

山土

砕砂
日本で培った技術を、アジアで展開する
事業や技術はすべて、人から始まります。企業にとって人は、人財です。人という財産を第一に考え、大切に守り、育てています。日本で培った、鉱山採掘に必要な安全管理技術、石灰石の品質管理などをベトナム(ゲアン省 Chau Cuong鉱山)で展開し、地域の雇用を生み出すとともに、安全第一での採掘を行っています。

日本の三星砿業

ベトナムのVINAWHITE
終掘後の鉱山の緑化再生への取組み
10年後の姿を思い浮かべて、測量・採掘計画を立てています。やがて訪れる終掘時に備え、跡地再生計画に取り組んでいます。採掘場の跡地に植草・植林し、緑化を行い、自然の美しさに溢れた事業用地に転換するという試みです。自然の景観のなかに、石灰石採掘の歴史の残り香が漂うような、人間的な温もりを感じられる「再生」を目指しています。そのための技術を習得し、グリーンコート事業部では心豊かな暮らしを提案するお庭づくりを行っています。資源の恩恵を受けた世代の責務として、土地のより豊かな未来図を描くこと。矢橋グループはそれが自分たちの「社会的責任」だと考えています。

跡地再生計画への取り組み

土地に合った緑化の研究
石灰事業では、矢橋グループ各部署の専門家が連携し、石灰石、生石灰、消石灰あるいはその関連商品を製造、販売しています。
採掘・破砕・石灰石粉砕技術
石灰石の採掘から出荷までの流れ
愛宕採掘場で採掘し一次破砕された石灰石を、選鉱場で破砕・水洗・分級処理して精鉱と呼ばれる焼成原石等を生産しています。要所に設置されたテレビカメラで各機器の運転状況を監視し、パワーセンター内のグラフィックパネル操作盤にて、集中管理されています。貯鉱された石灰石は、製品として、順次、需要先に応じて計量され、トラックや鉄道で出荷されていきます。
① スクリーン  (ふるい機)
破砕された石灰石はふるい機によってふるい分け。必要に応じて破砕、ふるい分けを繰り返します。
② ドラムウォッシャー  (水洗機)
破砕された石灰石はふるい機によってふるい分け。必要に応じて破砕、ふるい分けを繰り返します。
③ コーンクラッシャー  (破砕機)
コーンクラッシャーで二次破砕、三次破砕を行い、各種用途に応じたサイズを生産します。
④ シックナー  (沈殿池)
石灰石の水洗工程で発生する泥水は廃水処理場で処理しています。
⑤ トラック・貨車
完成した製品は順次、需要先に応じて計量し、トラックや鉄道で出荷しています。
焼成技術
焼成技術の取り組み
石灰石を原料としてお客様のニーズに合った焼成技術(焼成炉「縦型炉」あるいは「横型炉」)を用いて、生石灰を製造します。自社開発の特殊バーナーを使い種々燃料を組み合わせることにより、品質・コスト両側面の競争力を最大限発揮できます。保有する焼成炉では、各炉の特徴や機器の長所を最大限に生かす工夫により、細かな燃焼管理を実現し、高活性でありながら残量物の少ない生石灰や消和後のスラリー物性調節など、お客様の求める品質に合わせた焼成を行っています。また、排ガス成分の低NOx、低SOxを実現し、環境にも配慮しております。
生石灰製造設備
焼成炉(縦型炉あるいは横型炉)に応じたサイズの石灰石を高温で焼成し、生石灰を製造します。
メルツ式石灰焼成炉
6,000t/月×1基 5,250t/月×1基
ロータリー式石灰焼成炉
6,000t/月×1基 12,000t/月×1基
コマ式石灰焼成炉
3,000t/月×2基 2,100t/月×2基
コークス焚き石灰焼成炉
1,500t/月 ×1基
矢橋工業㈱ 名古屋事業部
日本製鉄㈱名古屋製鉄所構内に名古屋工場があり、鉄鋼用の生石灰を焼成しています。原料の石灰石は、乙女坂工場より石灰石運搬専用貨車にて名古屋工場に運んでいます。

石灰石運搬専用貨車

名古屋工場
加工技術
生石灰をベースに焼成・反応・混合・造粒・乾燥・分級・調合などの加工技術を有し、工業向けの他、地球環境・医療の場でも貢献できる商品開発を進めています。
消石灰製造設備
生石灰と水を反応させて製造。
4,000t/月
高反応消石灰製造設備
600t/月


生石灰スラリー・
消石灰スラリー製造設備
生石灰・消石灰を水と混合しスラリーを製造。
軽炭(乾粉)製造設備
消石灰スラリーに炭酸ガスを化学反応させ、脱水・乾燥・粉砕する。
500t/月
軽炭(スラリー)製造設備
微細に合成された軽質炭酸カルシウムを高濃度で分散させたスラリー「コーラルブライト ® 」を製造。500t/月
鉄鋼用精錬剤製造設備
各種石灰に副原料を配合して製造。
2,500t/月
固化材製造設備
各種石灰に副原料を混合・防塵加工して製造。
3,000t/月
改良土製造設備
2,000t/月
シート乾燥剤 パルクエース
排熱・排ガスを利用した温室で ハイテク農業
石灰製造で発生する排ガスと排熱は、農業にとって魅力的な資源となる可能性を持っています。 そこで、環境負荷低減と再資源化を目指し、ハイテク農業をスタートしました。石灰製造で発生する大量の排ガスと排熱を温室農業に活用する技術を開発し、大きな環境負荷を潤沢な資源へ転換することを目的としています。 現在、環境制御された温室でトロピカルフルーツ栽培に取り組んでいます。

温室

スターフルーツ
石灰焼成炉から発生する当社の排ガスは、独自の焼成技術によって業界内でも屈指の洗浄性を誇ります。排ガスに含まれるCO₂は植物の光合成を促進し、果実を美味しく、収穫量を多くします。排熱は温室の中に熱帯の環境を作り出します。
矢橋の石灰製品は
こんなところで活躍しています。
石灰とは、生石灰(酸化カルシウム:CaO)、消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH)₂)の総称です。広い意味では石灰石(炭酸カルシウム:CaCO₃ )やマグネシウムを含んだ苦土石灰(ドロマイト:CaMg(CO₃)₂)も含まれます。
生石灰は石灰石を焼成してつくります。消石灰は生石灰を水で消和してつくります。
鉄鋼
溶鋼中の不純物除去 /
スラグの塩基度調整
製紙
紙の不透明度、白色度、光沢度の向上
ガラス
ガラスの原料
プラスチック・
ゴム・塗料
充填剤 / 補強剤
農業
酸性土壌の中和 / Ca・Mg等のミネラル補給
畜産
牛や豚、鶏等の飼料 / 鳥インフルエンザ等の防疫・消毒
食品
米菓等の乾燥剤 / 食品添加物
土木
道路の敷石 / 土地の造成 / 軟弱土の改良
医療
全身麻酔時の二酸化炭素吸収剤
衛生
衛生用品の部材
電子
工業用酸性ガス吸収剤
環境
排ガスの脱塩・脱硫 / 溶融炉スラグの塩基度調整 / 排水の中和剤・凝集剤