文化
巧妙で絵画のようなベトナム刺繍
Tranh thêu(チャン テェウ)の魅力とその広がり
手工芸のひとつであるTranh thêu=刺繍は、ベトナム全土に広く根付いています。なかでも、ハノイ市トゥオンティン区クアットドン村は、洗練された技術を持つ職人が多く集まる地として知られています。この村の刺繍職人たちは、かつてウコンやヘナ、藍の葉など天然の素材で染めた糸を用いて作品を制作していました。20世紀初頭になると、フランスや中国から色鮮やかな糸や高度な技術が伝わり、表現の幅がさらに広がりました。刺繍絵は、下絵を描いた布を枠に張り、シングルやダブル、4本取りなど糸を使い分けて刺していきます。繊細さと根気が求められ、大作では完成に5〜6か月を要することもあります。一方で、クロスステッチ刺繍はより手軽に取り組める技法として、高い人気があります。家事や仕事の合間に楽しむ人も多く、各地でクロスステッチに親しむ光景が見られます。当グループ会社VINACADでも刺繍好きの社員が作品を制作し、社員食堂に飾っています。最下部の「梨の花」は、数か月をかけて仕上げた大作です。完成までには多くの時間と手間がかかりますが、その分達成感も大きく、次の作品への原動力にもなっているようです。